活字は約320℃の熱の中から生まれます。
生まれたての活字はほんのりと温かいのです。そして、活字を拾う時、組む時、冷たくなった金属の活字に指先から再び体温が伝わります。人肌に温められた文字から生み出される活版印刷には独特のぬくもりがあります。でもそれは目に見える刷り味のことではありません。印刷物にはいつも名もなき職人達の熱が帯びています。それを伺い知ることはとても難しいのです。
活版印刷では一番大切なことはいつも目に見えません。「温度」と同じ様にただ感じるだけなのです。temperatura(温度)を縮めると「temp」。temp pressは活版印刷の持つ温度を映しとり、その魅力の本質を探ってゆきます。
澤辺由記子(temp press)
澤辺由記子 Yukiko Sawabe
凸版印刷・印刷博物館の印刷工房にて活版印刷のワークショップ、アーカイブの仕事に携わり、多くの活版職人から直接指導を受け、その技術と歴史を学ぶ。その後グラフィックデザイン事務所を経て、temp pressという名でタイポグラフィにまつわるプロジェクトとデザインの仕事をはじめる。
現在、公益財団法人ポーラ美術振興財団の若手芸術家在外研修で、スイス・バーゼルにて滞在制作中。